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「医は食に、食は農に、農は自然に学べ。」公立菊池養生園名誉園長 竹熊宣孝先生

熊本県北の宝もん バックナンバー

熊本県北が誇れる、こだわりのものづくりや人物を紹介するコーナーです。

日本では、第二次世界大戦以降、食生活が激変しました。急速に食の欧米化が進んで加工食品や添加物の使用が増え、昔からの農業は衰退しました。しかし、それが私たちの健康や子どもたちの未来にまで暗い影を落としていることを、ふだんから考えて暮らしている人は少ないと思います。

「医食同源」や「地産地消」が叫ばれるようになるずっと前から、土と命のつながりに目を向け、30年以上にわたって食の大切さを伝え続けてきた医師、竹熊宣孝先生。菊池養生園と菊池養生伝承館の館内には、竹熊先生の自筆の標語が所狭しと貼られています。「世をあげてグルメグルメで病いも国際化。医療も国際レベルでないと間に合わん」「食養生、食わぬも養生。一生の食いぶちは決まっとる。はよ食いあげたら、それまーでよ」「腹八分目、胃の門限は九時」「農薬は農毒薬の略字なり。虫はコロッと人はジワーッと殺さるる」などなど…辛口ながら、どこか人間味があり“なるほどな〜”と考えさせられる言葉ばかりです。

この日はちょうど、週1回の「養生講座」が開かれる金曜日。八代農業高校の生徒さん、大牟田市医師会看護専門学校の学生さんらと一緒に講座に参加し、竹熊先生の実体験から導き出された、魂のこもった言葉に耳を傾けました。これまでに、樋口恵子さん、田嶋陽子さん、倉本聡さん、永六輔さんなどの著名人も大勢訪れたという「養生講座」。“農業は命をつくる学問。医者よりえらい”という持論を掲げ、40万年、消えずに受け継がれてきた命と食と農業について、真剣に、時にはユーモアを交えながら語る竹熊先生の言葉が心にしみました。

「食うて死ぬのが当たり前だから断食すると変人扱い。学校給食に飢えの教育もあってよか」

私は血液疾患の専門で、14年間、熊大病院で研究もしました。私が医者になって50年。ここで百姓をしながら、みなさんにこういうお話をして30年以上になりますが、「面白か先生。点滴1本打たずにしゃべってばかり」とか「医師免許はあっとだろか」と、言われます。医者なのになぜこんな事をしているかといえば、医療がどんなに良くなっても、大切な事をみんなが知らなければ意味がないからです。そこで、この講座を始めました。「土と命」が私の宗教で、医と食と農の視点づくりがこの講座の役割。ですが、せっかくなら楽しくと思って、芝居小屋風にしました。ここには、世界中から色々な人が話を聞きにやって来ます。延べ40〜50万人が来てるんですよ。

ある時、私の娘が病気になり、リウマチ熱で、医者には助からないと言われました。そこで、絶食療法の第一人者である(大阪府)八尾市の甲田光雄先生の門をたたき、断食に挑戦したんです。やせて骨と皮だった娘は、食を断つことによって消化吸収がよくなり、冷え性やアトピーも治って健康を取り戻しました。小・中学校でも全く病気しなくなったのです。玄米を食べ、食卓から砂糖と添加物を追放することで、家族みんなが、うそのように体調不良を感じなくなりました。私は、この経験から「食は命」であり「食は病の根源」でもあると知り、医から食、そして農への取り組みを始めたのです。

 

今、いろんな病気が増えているのは、食べ物に主な原因があるといっていいでしょう。今では、食べ物を世界からかき集め、その結果、病気も国際化しました。ガン、心臓病、糖尿病などが増えたのは、飽食の結果でしょう。
外国から洪水のように農産物が入ってきて、日本は国全体が自給の大切さを忘れてしまいました。これだけ短期間のうちに、民族食を切り捨てて欧米食に切り換えたのは日本ぐらいでしょう。経済優先で食べ物が作られて、加工食品、食品添加物も大量に増えた。その結果、食が原因の病気が氾濫して、今や国民のほとんどが半病人。メタボとか言っています。50年前にはガンを発見したら大変な騒ぎだったが、今は珍しくもない。3人に1人はガンで死ぬ時代です。

私は小学5年生のころから、田植えや草取りなどの農作業をしてきました。ウサギにヤギにニワトリ…馬以外は何でも飼いました。それで、ここに来た時、ずっと飼いたかった馬を飼ったのですが、ご馳走を食べさせたせいで、メタボリックシンドロームでカバみたいになって、歩くのも不自由になりました。「助けてやるからな」と言ったけれど、死なせてしまいました。動物も、ペットになり自然でなくなると、人間と同じ病気になるんです。医者も教師も母親も、「食べ物がおかしいのでは?」と考えなければなりません。

自然界に冷え性はないんです。ニワトリもブタも、はだしで風邪ひかない。冷え性やアトピーは人間だけの病気です。命のあるものは土に戻る。命のない自然じゃないものを食べたら「出て行ってくれよ」と、体が拒否反応を起こす。「人にとって本当にいい食べ物は何か」ということを勉強するのが栄養士なのに、こんな事は学校では教えません。飽食の時代に生きる今の人たちには、食べ過ぎを減らし、必要最小限食べるということを教えることも大事です。食べ物の有難さと命の大切さを知るためにも、食を断ち飢えを知ることも必要です。伝承館で、年末年始の断食を33年間続けてきましたが、「食わぬ」も養生の一つなんです。

「田のつく姓の人は多い。その田の恩恵を日本人は忘れた。田は水を溜め稲を育て空気を浄め文化を創る。今、その田の命が亡ばんとす」

世の中は経済が非常に大きな力を持っていて、どうしても、物の豊かさや経済的な豊かさを求めてしまう。そして、形の悪い無農薬の野菜より、見かけがきれいで少しでも安い野菜がいい、という人が多い。農家がほんとうに安全でいいものを作るには、消費者の意識が変わることが大事なんです。農業を継ぎたがらない若者や農家に嫁に行きたがらない人も多いが、私は、農業は一番カッコいい仕事だと思います。それは、農業が命をつくる仕事だからです。世の中、医者はいなくても人間は生きていけますが、命の糧を作る農業がなくなったら生きていけません。

農業は命の学問であって経済学になっちゃいかんと思うんです。食べ物をつくる農は、命の物差しで測らんといかん。 農薬や化学肥料で土地はやせ、食べ物は歪められてきました。野菜も、不ぞろいのものや虫食いのものが消えて、見てくれのいい物しか売れん。しかし、自然をないがしろにしたツケは、必ず返ってくるでしょう。除草剤を撒けば、土だけでなく虫などの生き物も死んでしまう。食べ物が大地から生まれることを忘れてはいけないと思います。

うちの弟も、ホリドールという農薬の中毒で倒れ、命を落としかけましたが、作家の(故)有吉佐和子さんが今から35年ぐらい前に、「複合汚染」の中で、農薬と化学肥料に頼った近代農業の恐ろしさについて書きました。それが契機となって農薬の使用が見直されましたが、その後、除草剤が登場しました。ベトちゃんドクちゃんで有名になった枯葉剤も、除草剤の一つですよ。
いつか、有吉さんが、ここの農場を訪ねて来られて「農薬を使っていない野菜はおいしいですね」と、言われた。その時、有吉さんは、本にも書けなかった重大な話をされました。現代人の生殖能力が落ち、子どもを産めない人が増えている、と心配しておられました。それを聞いた私には、命と食と農について伝え続ける責任があると思っています。朝日新聞に、「人類は子孫を残せるか」という社説が載りましたが、地球の命は今、11:55だと言われています。12:00のタイムオーバーまで、あと5分だというんです。

ここには1万坪の畑があって食べ物を作っていますが、これだけ中国や東南アジアで人口が増えれば、食の問題は深刻です。食べ物は、水はどうなるのか? 今後、飢えの時代がくるとしたら、百姓の道しか生き延びる道はないと思いますよ。土地と鍬さえあれば安全な食べ物をつくることができるし、都会でも簡単な野菜は作れます。みんなが一度農業をやって自分で作ってみると、色々なことがおかしいとわかると思うんですよ。
養生農園では農薬や化学肥料を使わず、堆肥も作り、いろんな作物を有機栽培で育て養生食として提供しています。ニワトリもつぶし、命を頂くことを体 験します。この農園で汗を流して農業の喜びを取り戻してもらいながら、食と農業、そして命の大切さについて気づいてほしいと思います。

お問い合わせ
菊池広域保健センター 公立菊池養生園診療所
〒861-1201 菊池市泗水町吉富2193-1 電話:0968-38-2820
《お問合せ》養生伝承館(担当/徳永一茂さん)0968-38-2811

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